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※この話はあまり幸せな話ではありません。
幸せになるアスカガ以外イヤ、という方はご遠慮下さい。
何でもこい!という心の広い方のみどうぞ!








次の日明らかに動転した様子であの兎がやってきた。

「どうした?」
「あっ…わ…私のお父様がっ…いないんだ!昨日から帰ってこないんだ!」

蘇る昨日の光景。
もしかしてという気持ちとまさかという気持ちが入り混じる。
兎の目から零れ落ちた涙は地面に沁みこみ丸い形を作る。
不安で押しつぶされそうな小さな胸を想うときゅ、と心臓が痛む。

「どうしよう…」
「一緒に探そうか?」
「いや…足が痛むだろう?…もう少し一人で探してみるよ、すまなかったな」
「そうか…」

あれがもしも君の父親だったならばもう二度と帰って来はしない。
どこを探しても姿を見る事は叶わず、どんなに待っていてもその人は二度とその扉を叩くことも無く抱きしめてくれることも無い。
声を聞くことも触れることも無い。あるのは共に過ごした思い出だけ。

胸がチクリと痛む。

兎の後姿を見ながらそういえば自分から何もしてあげた事が無かった事を思い出す。
いつも兎から与えてもらうばかりで何もしなかった。
自分から触れる事さえも…



PICK STAR <手のひらの星> 5



ズガーン


どこかから嫌な響きが聞こえてくる。
鳥達が騒いでいる。
その響きは兎の駆けて行った方向に近くて心臓がドクンドクンと脈打つ。

空を旋回する鳥を眺めているとイザークがやってきた。

「イザーク…今の音は何だ?」
「人間だ!俺達狼ばかりでなく鳥や兎など無差別だ!」
「兎…も…?」
「ああ、俺は行く。お前も早く逃げた方がいいぞ」

あれから姿を見せない兎。
何度も響く嫌な音。
頭の中で繰り返し何度も響く音を止めようと耳を塞ぐけれど音は止むどころか更に大きく木霊して…

足が痛む事も忘れて走り出した。

木の枝が頬を掠める。
足の傷がズクンズクンとまるで小さな命を持っているかのように蠕動している。
痛みは今は感じない。
走ることで体は熱を発しているはずなのに、手や足の先は逆に冷えていく。

横たわった朽ちて苔生した大木を乗り越えると少しだけ開けた場所に出た。
そこで見たのは銃を構えた人間に追い詰められた兎の姿。

反射的に牙を剥き人間に飛び掛かる。
すぐ横を弾が流れていく。
恐怖に脅えた兎の表情が驚きに変わったのが横目で見えた。

「あっ!」
「逃げろ!」
「でっでもっ!」
「お前の手に負える相手じゃない!」
「でもっお前は?一緒に逃げよう!」

数歩後ずさりした人間を睨みつけ牽制する。
その間にも人間は銃に弾を込めている。
兎だけでも早く逃がさなければ…!

「…お前の父親を殺して食ったのは俺だ」
「な…に…言って…?」
「お前の匂いを追ってあそこに来たんだろう。久しぶりの兎の肉は美味かった」
「本…当…に…?」
「ああ、やっぱり兎の味は格別だな、早く行かないとお前も食うぞ!」

兎の目が潤み手が震えるのを見て心が少し痛んだけれど、草むらの向こうへと駆け出すのを見て安堵する。
あの兎がちゃんと逃げ切れるように、俺は出来る限りの事をしよう。

こんな事が今まで他者の命を奪いながら生きてきた事に対する免罪符になるなんて思っているわけじゃない。
綺麗事とかじゃなく、ただあの兎を助けたい。
それだけだ。
意を決して足を踏ん張る。
あとはタイミング。

足の爪が土を蹴る。


先程から何度も聞いた爆発音が耳元に響く。


それと人間の叫び声。


俺が飛び掛った事に驚いた人間は後ろに下がった拍子に谷底へと転落してしまったようだった。
しかしこれで君を守ることが出来たようだ。



あの日君が洞穴に来るまで
あの暗闇で一人でひっそりと死んでいくのだと思っていた
それは命があっても死んでいるのと同じ事
とっくの昔に尽きていた命ならば、どう使おうが構わないだろう?

胸のあたりからなま暖かい液体がとくとくと流れていくのを感じる。

体が重い

何か聞こえる

君が何か言ってる?

ぼんやりと白んだ視界にはもう何も見ることは出来ない

戻って来なくていいのに

君はこんな所に来てはいけない


「だめだ!死ぬな!生きるんだ!」


ああ…そんなに泣かなくてもいい
痛くはないし
怖くもない

すべての感覚が無くなっていく

目を閉じると遠くから君の声が聞こえる


せめて最後に君の名前が知りたかったな


「カガリだ!お前の名前は何だったんだっ!?教えてくれ!」


そうか…カガリか、いい名前だ

君に…俺の名前を覚えていてほしい…けれど

どうも伝えられそうに無い



「おい!目を開けろ!開けてくれっ!」



大丈夫

もう

寂しくない

一人で逝くわけじゃない









あの日からしばらく家からほとんど出なかったが、久しぶりにあそこに行ってみた。

洞穴に入ると薄暗い土の上に何かが見える。
近付いて見てみれば人参の芽が出ていた。
太陽の光が届かないからか元気は無いし弱々しい。
土をそっと掘ってみると人参がたくさん埋まっていた。
そして人参と一緒に丁寧に葉っぱにくるまれた何かが…
そっと開いてみれば中にはあの日傷口に巻きつけたリボンが綺麗に丸めて入っていた。

時間が経つと共にすべては夢だったのではないかと思えていたのだけれど、今目の前にあるこれはこうして手に触れられて感じる事が出来る。
確かに存在していた日々。

「いつかまた会えるかな…?お前に…」

その時はお互い名前で呼んで、確かな明日があるといい。
それまで私はお前のくれた今を精一杯生きていこう。





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は・・初めて死ネタ書いた・・(それだけでどきどき・・
狼はとっても不器用なので嘘がバレバレです。
輪廻転生を信じているわけではないけれど…何度生まれ変わっても2人は一緒に幸せになって欲しいと思う私は痛いですか??




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